『カラヴァル(Caraval) 深紅色の少女』は新進気鋭のファンタジー

あらすじ・概要

姉のスカーレットと妹のテラは、領主である父に厳しく育てられていた。父が決めた結婚を数日後にひかえたある日、スカーレットのもとにカラヴァルからの招待状が届く。

カラヴァルとは、年に一度、世界のどこかで開催される魔法のゲーム。スカーレットはカラヴァルに参加することを夢見ていた。彼女は妹のテラと、船乗りのジュリアンと供にカラヴァルの会場に乗り込む。

だが会場にはテラの姿はなく、スカーレットはテラを探すためにゲームを進めていく。夢と魔法、嘘と真実の中で、スカーレットが掴んだものは?

クリームのように甘く、ふわっとした文体

文体は三人称だが、限りなく主人公であるスカーレットの独白に近い語り口だ。比喩は多めで、女性作家らしい情緒的な比喩で溢れている。これをクドイと感じるか、心地良いと感じるかで、物語への没入感は大きく異なるだろう。

少なくとも、僕には好みの文体だ。この色鮮やかな比喩の数々が、カラヴァルという魔法の世界を照らしている。

スカーレットとジュリアンの関係

二人の距離が縮まっていく構成は見事だった。二人の出会いは最悪に近いもので、ジュリアンは女をかどわかすいけ好かない男とスカーレットは認識していた。しかし、しだいにジュリアンは見かけに反した紳士的な面を見せたり、スカーレットを助けることで、スカーレットは徐々にジュリアンに心を開いていく

だが、同時にジュリアンからは得体の知れない不気味な側面が見え始める。ゲームを進めていく内に、スカーレットは、ジュリアンこそがゲームマスターであるレジェントなのではと疑い出す。

この一連の構成は見事であり、僕もすっかりジュリアン=レジェントなのではと勘ぐったのだが、すっかり騙されてしまった。

テラとスカーレット

あらすじをほとんど読んでいなかったため、最初はスカーレットとテラがゲームの謎を解いていくのかと思っていたが、テラは囚われの役だったため、予想外に出番は少なかった。

彼女も秘密を抱えていたのだが、それが明らかになるのは次巻以降になるようだ。

ラストについて

残念に思ったのが終盤だ。死んだと思ったキャラがあまりにもあっさりと生き返るのは少し萎えた。あくまでもゲームだから仕方がないのだが、それでももやっとする。また物語の展開がレジェントの筋書き通りなのも、すっきりとしない。

全体の感想

レジェントの正体や、テラに関する謎のほとんどは次巻以降に引き継がれるため、今作だけでは何ともいえない。ただ欲を言えば、もう少し他の参加者を巻き込んだ内容にしてほしかった。

せっかく参加者が複数存在するのに、主要キャラ意外は蚊帳の外のため、正直いてもいなくても大差なく、スカーレット以外の参加者は、このゲームをクリアできたのかすら疑わしい。

後半は辛口になってしまったが、カラヴァルは決してつまらない小説ではない。既に続編が決定、映画化の話も動いているだけあって、全体の流れは非常に面白かった。

ただ、理屈や何らかの説明を求める人には向いていないだろう。逆に不思議な国のアリスなど、ファンタジーが好きな方には、堪らない内容となっている。
追記:続編、遂に出る

カラヴァル待望の続編「レジェンダリー 魔鏡の聖少女」が遂に登場。今作の主人公はやはりドナテラ。謎に包まれたドナテラやレジェントの秘密が気になる方は、ぜひ読んでみてほしい。