ミステリーに本物の預言者が参戦? 魔眼の匣の殺人の評価・感想

魔眼の匣の殺人

ミステリランキング3冠を達成した屍人荘の殺人の続編、魔眼の匣の殺人を読み終わったので、評価や感想などを語っていく。

ネタバレなしの感想

実はまだ読んでいない、買うのを迷っているという人向けに、ネタバレを極力排除したあらすじや感想を語っていく。

魔眼の匣の殺人のあらすじ

「魔眼の匣の殺人」のあらすじ

衝撃の結末をもたらした「屍人荘の殺人」から2ヶ月。葉村譲と剣崎比留子を含む9人の男女が、「魔眼の匣」という人里離れた施設を訪れる。

そこには百発百中の予知能力を持つ老女「サキミ様」がおり、彼女は予言する。「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と。

予言の存在を証明するように、外界との唯一の繋がりである橋が燃え落ち、最初の一人が死ぬ。

絶望と混乱に見舞われる中、サキミ様とは別の予知能力者が存在することが明らかになり――。

前作は必読

公式の紹介文などで、「屍人荘の殺人」シリーズと銘打っているだけあって、本作は「屍人荘の殺人」の正当な続編。主な登場人物である葉村くんと剣崎さんも続投だ。

前作のネタバレや、明智さんの顛末についても容赦なく明かされるため、間違いなく「屍人荘の殺人」は読んでおいた方が良い

本作の二大ポイント

本作のポイントは大きく分けて二つある。

  1. 「絶対に外れない預言者がミステリーの世界にいたら」という設定。
  2. 羽村君と剣崎さんの関係性。

1つめの預言者云々はネタバレになるため後述する。

2つめのそして二つ目とケンサキさんの関係性 。前作のラストで剣崎さんは葉村くんに対し、私のワトソンになってくれないかと提案するが、断られてしまう。

このやり取りであり関係性は本作にも繋がっており、どういった方向性に転ぶかがポイントとなる。

ネタバレなしの総評

結論からいうと、前作よりも格段にミステリー作品として洗練されていた。

屍人荘の殺人では、○○○という奇想天外要素による、斬新な密室殺人が魅力だったが、正直トリックについては少し大味な印象を受けた。

しかし本作では、同じ作者とは思えないほど、精密かつ最後の最後まで驚かされるような展開の連続。伏線の貼り方も非常に巧みだった。

怪しげな預言者というテーマは使い古されていると同時に、ミステリーに超能力はどうなのかという声もありそうだけど、個人的には本格ミステリといっても、差し支えがないようなレベルの高さを感じた。

屍人荘の殺人はあまり合わなかったという人ほど、本作を一度手に取って見てほしい。

ネタバレありで「魔眼の匣の殺人」を語る

魔眼の匣の殺人について一通り説明したので、ここからはいよいよネタバレ要素や物語の真相について触れていく。

ミステリーで本物の預言者が現れたら

ミステリーの預言者や未来予知というと、大抵はその預言者や周りの人間が予言を実現させるために、細工をするというのが鉄則だ。

しかし魔眼の匣の殺人で登場する2人の預言者は、偽りではなく本物の存在として描かれている。こういったファンタジー的な要素が含まれるのが、屍人荘の殺人シリーズの特徴だ

予期せぬクローズドサークルが起こり、ホワイダニット(なぜ殺したのか)というところに、絶対に当たる予言を持ってきている。

2日以内に誰かが4人死ぬ……なら先に定められた人数を殺しておけば、自分は助かるのでは? という動機づけ。十色ちゃんの絵など、予言された未来を推理に利用したりするクレバーさが著者ならではだ。

殺人の動機が弱いという声もあったけど、予言という得体が知れないながらも、絶対的な力の存在が証明されたのなら、恐怖心や助かりたいという焦燥感から殺人を行ってもおかしくないと、個人的には納得。

特に最近のニュースなどを見ると、人が誰かを殺すのに、はっきりした動機は不必要なのではと思わずにいられない……。

主人公になれなかった2人

魔眼の匣の殺人において、多くの人が印象に残ったであろうキャラが「十色真理恵」ちゃんと「茎沢忍」くん。

読み始めた当初、僕はこの2人が順当に生き残って、その後の屍人荘の殺人シリーズでもメインキャラになるのかなあと思っていた。

しかし、明らかに特殊な立ち位置の十色ちゃんは、中盤あたりで何の容赦もなく殺されるという衝撃の展開……。

茎沢くんは十色ちゃんのパートナー的な立ち位置で、十色ちゃんのことをフォローするけど、それがことごとく裏目に出てしまい、周りに風評被害を巻き散らかしてしまう。

あまりにも扱いが悪いけど、過保護ゆえに名誉挽回する機会があるのかと思ったら、まさかの熊に殺されるという……ちょっと笑ってしまうような雑な扱い……。

ただ葉村くんと剣崎さんも、お互いの仲が噛み合わず運が悪ければ、2人のようになっていても不思議ではない。あの高校生2人組を出したのは、やはり主人公勢との対比のためなのだろう。

これもしかしてTRICKなのでは?

突然だけど、TRICK(トリック)というドラマ・映画を知っているかな?

TRICKとは、霊能力を持つ山田奈緒子と、物理学の教授である上田次郎がオカルト関連の事件を解き明かすという作品。TRICKに登場する霊能力者の大半はインチキペテン師のため、タイトルの通り犯人のトリックを暴いていくのが基本の流れ。

山田奈緒子は探偵役(ホームズ)で、自分が持つ超能力の存在に悩んでいる
上田次郎は助手(ワトソン)で、作中で奈緒子を助ける役割がある

このように、主演2人の立ち位置や関係性など、葉村くん・剣崎さんと被るものがある。

隠れたコンセプトとして、「本物の超能力だらけのTRICK」的なものがあるかもしれない。

もっともTRICKシリーズはコメディとホラー要素が強いため、屍人荘の殺人シリーズとはかなり雰囲気が異なる。

TRICKは最近、Amazonプライムで見放題の対象となっているため、興味がある人はぜひぜひ。

追記

後から知ったけど、屍人荘の殺人の実写映画の脚本は、TRICKの脚本担当と同じ人だった。制作側もTRICKと屍人荘でシンパシーなど感じる点が多かったのかな。

前作を上回る完成度と満足度

○○○がミステリーの世界に登場する屍人荘の殺人も面白かったが、ミステリーとしての完成度を考慮すると、本作の方が二段は上という評価。

特に最後の最後まで伏線やトリックを用意している辺り、著者の読者を落胆させず楽しませようとする気概がひしひしと伝わる。

次回作も刊行されようるのはほぼ確定だと思うので、次はどんなオカルト・超常現象が起こるのか期待したい。

【おまけ】管理人厳選! おすすめのミステリー小説

わざわざゾンビを殺す人間なんていない

実は屍人荘の殺人よりも先に、ミステリー×ゾンビの組み合わせをやっている作品。ただこっちの方は、ゾンビが家畜として管理されていたり、ゾンビが徘徊していたりと非常にカオスな世界観となっている。

名探偵に薔薇を

主人公とヒロインの関係など、屍人荘の殺人に通じる要素がある作品。ネタバレになるから控えるけど、この作品を読んだ後に屍人荘の殺人を読むと、いろいろと感慨深いものがある。

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